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2012衆議院総選挙

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てろてろ

「週刊現代」2012年11月17日号より
 今回、本誌はこの「12・16」と予想される解散総選挙に向け、全国の選挙区・比例ブロックごとの情勢を取材した。注目は何と言っても、冒頭で紹介したように、「戦闘宣言」をした橋下・日本維新の会である。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう語る。
「維新の会や石原新党など、いわゆる『第三極』の連携が、総選挙前にできるかどうかがポイントです。もし連携できれば自民党は180議席程度に止まり、民主党は80議席以下、そして第三極の勢力が180議席くらい獲得できる。公明党が30議席を獲ったとしても、自公連立で衆院の過半数、という構図にはならない」
 まず、全体的な選挙情勢がどうなっているかに触れておこう。野田首相が、なぜ解散を先延ばしにしたいか、よく分かる情報だ。
 民主党選対関係者がこう説明する。
「最新予測で、民主党が約80議席に沈むというのは事実です。さらなる問題は、この数字が一貫してどんどん下がっていること。春先に行った調査では、『200議席』という楽観的な数字も出ていました。ところが5月ごろから急激に悪化し始め、夏に行った調査では150議席前後。そして10月の調査でとうとう80議席になってしまった」
 政治ジャーナリストの山田惠資氏は、今度の選挙は以前とは構造が違う、としてこう語る。
「前回までの衆院選は、『民主党か、自民党か』を選ぶ選挙でした。しかし次は、『日本維新の会か、自民党か』を選ぶ選挙になります。予測では、衆院の480議席のうち、約200議席を民主党ほか中小政党が占めると考えています。そして残りの280議席を、維新の会と自民党が獲り合う。そうした構図になるはずです」
 では、ここから各地の選挙情勢を見ていこう。(現時点での予想獲得議席数。比例代表含む。以下同)
【北海道ブロック】
民主3~6 自民4~7 第三極4~6
 地元紙選挙担当記者がこう語る。
「維新の会は、北海道でまだ候補者を立てていません。しかし1区で候補を擁立すれば、民主党の横路孝弘元衆院議長を破って当選する可能性があると見られています。北海道5区、7区にはみんなの党の候補者がいるので、もし彼らが維新に合流したりするようなら、5区の自民党・町村信孝元官房長官も安泰ではない」
 大物議員の中で、先行きがもっとも暗いと目されているのが、民主党の鳩山由紀夫元首相である。
「民主党議員は、農協票を固めている4区の鉢呂吉雄元経産相だけが確実というところ。3区の荒井聰元国家戦略相が若干優勢、2区の三井辨雄厚労相すら苦戦中。さらに鳩山氏の場合は、小選挙区での落選がほぼ確実というくらい追い詰められています。毎週のように地元入りし、幸夫人も動員して巻き返しを図っていますが、現状、自民党の堀井学候補に約10ポイントの差をつけられています」(前出・地元紙記者)
 鳩山氏が生き残るには、比例で復活当選するしかない。だが、復活するには小選挙区で接戦を演じ、惜敗率を高める必要がある。本人の意思に関係なく、政界引退になりそうな状況だ。
【東北ブロック】
民主7~10 自民16~20 第三極7~10
 岩手県は、民主党を離れて「国民の生活が第一」を結党した小沢一郎氏の強力な地盤(小沢氏は4区)だ。だが、同じ県内で小沢一派とされていた1区の階猛氏、3区の黄川田徹氏は小沢氏に同調せず、〝王国〟は崩壊しかけている。
「小沢氏の地元なので、『国民の生活が第一』は比例で2議席くらい獲得できる可能性はあります。小沢氏自身も、小選挙区で落ちる可能性は低い。ただ、黄川田氏や階氏の離反の影響で、今後も小沢離れが進む可能性がありますね」(政治評論家・浅川博忠氏)
「東北ブロックで、民主党が自民党に勝てるのは岩手3区の黄川田氏、山形1区の鹿野道彦氏、福島3区の玄葉光一郎外相など、一握り。民主党も小沢新党も半壊状態になると思われます」(全国紙政治部デスク)
■あまりにも屈辱的な敗け方
【北関東ブロック】
民主10~14 自民20~24 第三極7~10
 北関東ブロックの栃木県は、みんなの党・渡辺喜美代表(3区)の本拠地であり、全県で候補者を擁立予定。「みんな」と橋下・維新、石原新党の関係性に注目が集まる。
「これまで、第三極では西の維新の会、東のみんなの党と言われてきましたが、石原氏が名乗りを上げてきたことで状況が複雑化しています。石原新党が北関東にも影響を及ぼした場合、みんなの党は食われる可能性が出てきました。両者がこの地域で選挙協力ができるかどうかがカギになってきます」(前出・浅川氏)
【南関東ブロック】
民主8~11 自民20~24 第三極8~11
 千葉4区は、野田首相のお膝元である。県議選に出馬して以来、20年にわたって築き上げてきた地盤だが、実は〝鉄板〟ではない。別の民主党幹部がこう語る。
「もともと野田首相は、新進党時代の’96年の選挙で落選し、’00年まで4年も浪人した苦い過去がある。支持率低下で今回は強い逆風が吹いており、民主・自民のどちらの調査でも、自民党の藤田幹雄候補と大接戦という数字が出ています。
 加えて、小沢氏が子飼いの青木愛氏を刺客として送り込むのではないかと言われています。現職の首相が落選するという、前代未聞の大波乱が起きる可能性もゼロではありません」
 南関東では北関東同様、みんなの党の勢力が強い神奈川県も注目される。江田憲司氏(8区)、浅尾慶一郎氏(4区)ら幹部が基盤を置いている。問題は石原新党の登場で、「第三極」としての連携ができるかだ。
「関東の各ブロックで第三極が連携できなければ、たとえ小選挙区で棲み分けができたとしても、比例代表の票で維新、みんな、石原新党が互いに食い合う形になる。自民党選対幹部は、第三極は選挙協力ができずに自民有利と見ています」(前出・山田氏)
 いったん手を切ったが、維新の会とみんなの党は現在、関係を修復中。そして橋下氏と石原氏は対話関係にあるが、石原氏と渡辺氏は、疎遠な関係にあるというのが大方の見方。石原氏と渡辺氏は相容れるのか。
【東京ブロック】
民主4~7 自民17~21 第三極10~14
 前都知事の国政進出で盛り上がるはずの東京ブロックだが、その勢いに懐疑的な見方も多い。
「自民党選対幹部の見立てでは、もしも維新と石原新党が連携できなければ、新党は東京ブロックで比例の1議席からせいぜい2議席に止まるということです。石原氏本人だけがギリギリ当選するかどうか、というところですね。前都知事の長男・伸晃氏(8区)は新党立ち上げ自体に反対する一方、弟の三男・宏高氏(3区・落選中)に、『新党には合流するな』と忠告しているそうです」(前出・全国紙政治部デスク)
 石原新党には、引退したはずの自民党の深谷隆司元通産相(2区)や、伊藤公介元国土庁長官(23区)らが合流予定との情報もあるが、それぞれ77歳と71歳。石原氏自身が80歳であり、驚異的な〝老人政党〟の様相を呈してきている。
■民主は東京で全敗する
 また、石原氏に同調すると見られていた元国民新党代表代行の亀井静香氏も、こう切り捨てた。
「〝トゥー・レイト〟(遅すぎる)だよ。昨年の12月以来、石原氏とは新党の話はしてきた。今年6月には、実際に立ち上げる決断まで一緒にした。ところが彼は、自分の勝手でそれをひっくり返したんだ。『あんたが〝死ぬ気で決起する〟というから相談してきたのに勝手になんだ! 一人で死ね!』って言ってやった。
 彼はいい加減な男なんですよ。いつも感覚的で、思いつきで話をする。前から注意はしてきたが、聞かないんだよ。何か決めても、翌日には違うことを言う。今回のような決起が国民の理解を得られるわけがない。俺はもう知らん。それが今の正直な気持ちです」
 亀井氏によれば、石原氏は橋下氏から連携を持ちかけられ、「舞い上がった」のだという。だが、その橋下氏自身、「たちあがれ日本」が石原新党に合流するとの報道を受け、「カラーに合わない」「世代が違う」と突き放している。第三極の勢力結集に向けて、今後も紆余曲折が予想される。
 一方、民主党は、菅直人前首相(18区)の落選危機が囁かれている。
「菅氏は自民党の土屋正忠候補と大接戦の状態。民主党を飛び出した横粂勝仁氏も出馬予定で、混戦です。深刻なのは、菅氏も含め民主党候補は東京で全滅する可能性が高まっていること。そのため東京の民主党議員からは、『選挙前に野田首相をクビにしてくれ。総辞職して、細野豪志政調会長など新しい顔で選挙をしてくれ』と、悲鳴のような要請が上がっています」(民主党幹事長室関係者)
【北陸信越ブロック】
民主7~11 自民14~17 第三極3~5
 文部科学大臣として復活を果たした田中眞紀子氏(新潟5区)だが、他の民主党議員の例に漏れず、現在は当落線上スレスレ状態に陥っている。
「眞紀子氏が大臣就任の打診を二つ返事で受けたのは、選挙が危ないためです。角栄元首相の威光はすでに過去のものとなっており、後援会組織もバラバラ。かつての〝王国〟は消滅の危機です」(新潟地元紙記者)
 石川2区では、自民党の森喜朗元首相がいったん引退表明するも、対抗馬の民主党・田中美絵子氏に不倫スキャンダル疑惑が持ち上がり、森氏が引退を撤回する可能性が出てきた。
【東海ブロック】
民主14~17 自民20~24 第三極10~14
 激戦が予想されるのは、減税日本の代表・河村たかし名古屋市長が国政復帰を狙って出馬する愛知県だ。
「河村氏は、民主党の古川元久前国家戦略相の地盤である愛知2区から出馬するのではないかと言われます。民主党から、熊田篤嗣衆院議員ら2名が減税日本に合流を表明しましたが、河村氏は『愛知1区や、比例名簿の1位を渡してもいい』などと言って口説いたそうです」(民主党若手議員)
 もっとも、減税日本も日本維新の会との連携を前提とした国政進出だが、橋下氏は熊田氏が労組系(大阪市職員組合)の支持を受けていることを理由に、「連携は難しい」と表明した。互いがどこまで歩み寄れるかが焦点になりそうだ。
■維新の風は九州に届くか
【近畿ブロック】
民主11~15 自民17~22 第三極28~32
 衆院選の台風の目・日本維新の会の本拠地である。
「大阪では19選挙区のうち、維新の会が14議席を占め、維新と選挙協力する予定の公明党が4議席を確保してしまい、民主党は11区の平野博文元官房長官以外は全滅する可能性が高いと見られています。自民党の小選挙区での獲得議席はゼロになるでしょう」(別の全国紙政治部デスク)
 一時に比べて世論の支持率は低下しており、石原新党との連携問題など、今後の課題は多い。しかし、細かい問題を〝すべて吹き飛ばす〟方法が、維新の会には残されている。
「注目すべきは、橋下氏本人が、衆院選に出馬するかどうかです。自ら選挙に出て陣頭指揮を執り、各地を行脚すれば、維新の会の支持拡大に劇的な効果が上がるはず。ただ、それをすると、大阪を国政への踏み台にした、などと批判を浴びることが予想されます。最終的に橋下氏は、非常に難しい決断を迫られると思います」(前出・浅川氏)
【中国ブロック】
民主3~5 自民18~22 第三極4~7
 もともと、保守王国として知られる中国地方では、民主凋落の追い風を受け、自民党が強い。
「安部総裁の山口4区はもちろん、石破茂幹事長の鳥取1区をはじめ、鳥取、山口、島根の小選挙区は自民党が独占するでしょう」(全国紙選挙担当政治部幹部)
 ただし、中国地方では11月中にも、橋下氏による維新の会遊説が予定されている。〝鉄板〟と言われる自民党の牙城に、橋下氏がどう切り込むか見ものだ。
 また、広島6区は亀井静香氏の地盤だが、こちらは孤軍となるも、選挙では圧勝が確実と見られる。
【四国ブロック】
民主3~5 自民11~14 第三極3~6
 愛媛県の中村時広知事は橋下氏の盟友で、地元・松山を中心に、「愛媛維新の会」や「松山維新の会」などの組織がすでに出来上がっている。
「中村氏は愛媛1区の自民党・塩崎恭久元官房長官との関係が険悪。維新の会で候補が立てば中村氏の後押しで当選者が出る可能性が高い一方、塩崎氏はかなり苦戦を強いられるでしょう」(地元紙政治部記者)
 民主党は、徳島1区の仙谷由人党副代表が辛うじて当確ラインに乗っている他は、全四国において大惨敗の見込み。
【九州沖縄ブロック】
民主10~14 自民26~30 第三極10~14
 前出・鈴木氏は、「九州ブロックは、第三極にとって重要」として、こう語る。
「各地にはブロックごとに、第三極となる中小政党が立ち上がっていますが、九州にはまだ地域政党がありません。したがって、九州は草刈り場になり得る。ここで第三極がどれだけ勢力を伸ばせるかが、総選挙の行方を左右するでしょう」
 維新の会に合流した松野頼久元官房長官(熊本1区)は、当選確実。一方で、民主党所属ながら党執行部から距離を置く、佐賀1区の原口一博元総務相は、水面下で橋下氏や石原氏、さらに小沢氏らと接触中。総選挙前後の去就が注目される。
 ここまで見てきたように、現在の情勢は、民主党の壊滅は確実、かといって自民党も過半数を一気に獲得するほどの伸びはない。勝敗の帰趨は、第三極がこの中でどれだけ有権者の理解を得て支持を広げるかだが、憲法、消費税、原発など、重要政策に一致点を見出せるか、先行きは不透明だ。
 ただし、橋下氏は石原氏が任期途中で辞任したことに触れ、「自分は市長であり続ける」と言う一方で、こう述べている。
「政治家は任期をまっとうしたから仕事をしたというのはおかしい。今までの結果と、今後こういう結果をもたらしますというもので評価されるべき。4年間、何もしないまま任期をまっとうしたらそれでいいのか。最後は有権者が判断する」
 橋下氏本人の出馬は、やはりありうるのかもしれない。それは、維新の会がゴール直前で一挙に既成政党を大逆転し、政界の地図を塗り替えるための起爆剤となるだろう。

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