先に結論を述べると、泊原発があっても時間稼ぎはできたが、結局ブラックアウト。
防ぐためには、発電能力の極集中を避けること。
つまり、発電能力を泊原発と苫東厚真火発にほぼ集約してしまった北海道電力の選択ミス。
https://twitter.com/rassvet/status/1037703111941402625
さて泊原発200万kWがオンラインなら全域停電に至らなかったか連ツイで再度検討してみる。
どうも皆、予備力という言葉を勘違いしている気がするんだ。まず、前提条件として地震発生時の消費電力を確認。
前日9/5午前3時の消費電力は292万kWh。日中ピークを380万kWhと想定。
さらに、北海道電力の過去のパターンでは定期検査を5月〜8月上旬まで実施するので、泊は3基運転中と想定する。
従って運転出力は200万kWでいいだろう。ここでポイントになるのは、日本の原発は負荷連動運転をしないということ。
つまり、原発は常に最大効率で動いている。
だから苫東厚真の急な脱落に対して、原発自体が何かできるわけではない。
泊が動いていれば確かに苫東厚真の負荷は小さかったろう。
ただし、同PSは道内でも新しく、高効率で安価な石炭火力のため、原発の次に優先的に使われていたはず。
4号機と2号機の130万kWが被災時運転していたと想定する。これで330万kW。
実需に対して多いけど、ここで揚水発電が関与してくる。
10時間揚水14時間発電の運転パターンで、22時から高見、新冠、京極に揚水して貯水率50%。
60万kWの揚水に効率80%で75万kWを使用していると想定。
あとは連携線の都合もあるので、ほくでんは知内を動かしておくのではないかと想定される。これで揚水しながら夜間の供給力最大325万kW確保。
日中は揚水60万を乗せ、予備力は知内フル稼働で410万kWの確保ができる。
概ねこんな布陣だろう。ここで地震発生。苫東厚真130万kWが脱落。
直ちに揚水を中止して75万kWを需要に、さらに揚水発電で55万kWを捻り出す。
これで脱落分130万kWはカバー。
ただし貯水率は50%なので、このままだと朝8時には揚水が脱落する。
これは本来日中使う計画だから190万ビハインドしてしまう。知内の予備35万、北本連系60万を間に合わせても95万kW不足。
今日実際に動けた水力30万kWを入れても不足率20%では、周波数維持にはちと辛い。
しかもこれ、夜間に起きた地震であることに救われているケース。先にも書いたけど日本の原発は負荷連動で運用しない。
だから急激な電源脱落を助ける能力はそれ自身で持っていない。
夜間の揚水発電中なら、揚水を止めつつ送電に回すことでカバーできるが、日中の地震なら無理。
とすると、原発を動かしていてもそれ自体は予備力として機能しない。
こういう急変に対応できるのは負荷連動運転ができる火力が主となる。つまり、今回のような大型発電所の脱落に備えるには、原発で電力を充足させながら、火力発電所に「余力を持たせたまま止めない」ことが重要。
シミュレーションのように、原発再稼働と同時に効率の悪い火発を長期休止にしてしまっている場合、合計の数字の上では余力があっても、その余力を持ってるのが単独の大型火発では、そちらが被災したときに調整力を提供する電源が全くないのだ。
だから結論としては、泊原発が動いてたとして、今回のような深夜の地震でかつ全力揚水中なら、揚水操作のオンオフが調整力になって即時の停電は免れただろうけど、昼まで維持できるかどうかは怪しく、同じ落ち方を日中にやられたら同じ結果だっただろう、となります。大規模の脱落に対応するには、瞬間動予備力(spinning reserve)の大量確保が必要で、それは発送電側コスト効率の悪化に繋がる。
これは柏崎や東新潟のような、大規模サイトへの設備集約化を否定する1つの大きな理由になると思うわけです。
次世代電源はコンパクトかつ出力変動できる電源を、ドローンのローターのように相互協調させるイメージで考えていくべきかなぁー、などと。このシミュレーションは原発に最大限有利なシナリオで想定してるので、高見新冠の揚水比率は50%を想定に置いてます。
揚水に使ってる量が少ないとそもそも泊が瞬間に調整できる量が少なくなり、瞬停で検証が終わると思います。
参考資料:Wikipediaより
水力発電所(大きなもの)
高見発電所(静内川)ダム水路式(揚水式)20万kW 北海道日高郡新ひだか町……震度5強
新冠発電所(新冠川)ダム水路式(揚水式)20万kW 北海道新冠郡新冠町
京極発電所(尻別川)ダム式(揚水式)40万kW 北海道虻田郡京極町
あとは10万kW以下。
火力発電所
苫東厚真発電所 石炭 165万kW(35万kW+60万kW+70万kW)勇払郡厚真町……震度7
知内発電所 重油 70万kW(35万kW+35万kW)上磯郡知内町
伊達発電所 重油 70万kW(35万kW+35万kW) 伊達市
(石狩湾新港発電所 LNG 171万kW予定(57万kW+57万kW+57万kW)小樽市)2019年1号機稼働予定